冬のくすの樹 梢すべてが切られる
樹は 言葉にゆれ 動けない 樹になれない わたし
紫が におう寒さ つゆの 午さがり
黒潮に 鮫がねむる 帰れない 二人
島の ボレロ 雨がやまない
ぼんねっとに ゆきもじ ゆびを ください
百才の 紙ひこうき あさの気流
おいたけものが まなこをひらく つゆのよる
荒野 の 体温 として 雨の 狂詩曲
ヴァンパイヤ 死ねない少女の 恋
もうそろそろ 家出の時刻 ダリヤ咲く
にえたぎる いかりのむこうに こすもすのはな
ロクロをひく 茶碗のじかんを 指にため
半矢の雉鳩が 枯れ草のかげに 屹立する
風が海面をわたる とおい人の けはいのように
星の海を 握りしめる ちいさな胎蔵
雨あがり まびかれた いっぽんの樹
あぶら絵の 裸のさびしさが 動けない
さびしさの 住所がちがう ハグをする
せいじゃくという はてのない不安を 花入れに生ける
わたしより ふこうなひとのうたを 聴いている
鳥になって ちいさな枝を あつめる
なまえのない 樹のしたをあるく
儀式のように いつもひろう紅葉
木の葉がおち ろうじんが 海をみあげる
陽だまりのなかの ゆるやかな死
ゆるやかな死が ボートをみている
首括る いつもの玄関
死顔は 紅を 薄くおびる
ちちのひつぎが つみにぬれている
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